ドイツの環境エネルギー系スタートアップと考える、これからの街づくり〜 スマートシティを支えるエネルギーマネジメントシステム事例 ~

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第1回ウェビナーレポート:
CROSSBIE(本社: ドイツ・ベルリン)がヨーロッパと日本を繋いで発信するウェビナー第1弾

ウェビナー開催日:
2020年11月19日

モデレーター: 
山本 知佳 (CROSSBIE, Managing Director)

提供: 
Venture Café Tokyo

登壇者: 
Jens Bischoff (Enapter, Business Development)
Nico Hahn (DABBEL, Head of Business Development)
Ryotaro Bordini Chikushi (NION, CEO & Co-founder)

スマートシティ実現のための技術を提供する、ベルリンスマートシティスタートアップ3社の代表に登壇していただき、日本とドイツ間におけるクロスボーダーオープンイノベーションのための各社プレゼンと、弊社代表・山本をモデレーターとするパネルディスカッション形式のウェビナーを行いました。

スマートシティとは

ICT技術を活用して、マネジメント管理の高度化やサービスの質の向上を行う都市、またその取り組み全体のこと。具体的には、AIやビッグデータを使ってエネルギーの効率化やインフラ、行政サービスをより効率的に利用できるよう全体最適化を目指します。環境にも配慮しながら、持続可能で人が住みやすい都市を作る取り組みとして注目されています。

スマートシティ実現に向けた技術を提供するドイツ3社の紹介

1人目の登壇者は、EnapterのJens Bischoff氏。Enapter(本社:ドイツ・ベルリン)は、高効率の水電解水素製造装置を設計・製造しているスタートアップです。水素エネルギーは持続可能なエネルギーの1つとして注目されていますが、その魅力についてもたっぷり語ってくれました。水素エネルギーは脱炭素化に有効で、年々価格が下がり、扱いやすいサイズへと進化しているそうで、ドローンや車、ガスやヒーターにも利用でき、貯蓄も可能。有害物質が出ないため安全性も非常に高く、Enapterが開発し特許を取得した陰イオン交換膜(AEM)式水電解装置「AEM Electrolyser」は既にドイツ、イタリア、タイなどで実用化されています。

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次の登壇者は、DABBELのNico Hahn氏。DABBEL(本社:ドイツ・デュッセルドルフ)では、建物のエネルギー管理システムソフトウェアを開発しています。今までは人が手動で監視・管理していたBuilding Management System (BMS)をデータベースを用いたAIで自動化し、商業ビルのCO2排出量やエネルギー使用量を最大40%削減することに貢献しています。DABBEL製のシステム導入はドイツに留まらず、各国の管理システムに対応可能です。ソフトウェアのため遠隔操作で一括管理でき、ハードウェアの設置は必要ありません。人による監視や管理が不要のため、ヒューマンエラーを8割削減することができ、さらに結果がスピーディに出ることが自動最適化の魅力です。

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最後の登壇者はNION(本社:ドイツ・ベルリン)のRyotaro Bordini Chikushi氏。イタリアと日本のミックスでドイツ育ちといった多様な文化的背景を持つChikushi氏は、ドイツと日本の文化をつなぐ都市開発を提案し、その重要な要素として、Empathy, Sustainability, Community of Practice, Participation & Ownership, Equality, Climate Action, Biophilia, Transparencyの8つを挙げます。中でも、都市やオフィスビルに植物など自然の要素を取り入れる建築方法であるバイオフィリックデザインは、自然とより近くなることで癒されたり、ゼロカーボンやサーキュラーエコノミーにも貢献したりと、地球環境と人類のウェルビーイングに必要なこととして注目されています。具体例としては、ベルリンでインフラ企業やe-sportsのハブの建設や、日独間の技術交換プログラムを実現させ、人と人とがつながる価値を形成しています。

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続くパネルディスカッションでは、モデレーターのCROSSBIE(本社: ベルリン)山本から鋭い質問が飛び出します。「日本への進出には価値があると考えているか?」といった質問には、3人ともが肯定的な回答。世界平均と比べてレベルが高く、革新的な日本のインフラは、スマートシティを実現する上で強みになるそうです。一方でエネルギー費用が高いという弱点があり、新技術によって費用削減できる可能性が大きくあります。

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おわりに

日本とドイツには言語や文化の壁があり、信頼や関係性の築き方にも相違点はありますが、日本は期待値の高い市場であると話してくれました。3社とも、コロナの影響を受けながらも日本の企業とパートナーシップを結ぶことに前向きなようです。お互いの文化や技術の強みを活かして、よいよい関係性を築くことを期待できるウェビナーとなりました。

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