欧州と日本のFemTech(フェムテック)女性起業家たちと語る

第2回ウェビナーレポート:
CROSSBIE(本社: ドイツ・ベルリン)がヨーロッパと日本を繋いで発信するウェビナー第2弾

ウェビナー開催日:
2020年12月10日

モデレーター:
山本 知佳 (CROSSBIE, Managing Director)

登壇者:
竹之下 千尋 さん(Healthtech Women Japan, 代表)
リア・ディアスさん (Quæfacta, CEO)
モニカ・レイ・スコットさん(TABOO TECH, Design & Innovation Specialist)
北 奈央子さん (ジョコネ。代表取締役)


Femtech (フェムテック)とは
Female(女性)とTechnology(テクノロジー)を掛け合わせたFemTech(フェムテック)とは女性の健康に関する課題をテクノロジーで解決するサービスや製品のこと。2013年に生理周期を管理するアプリを開発したドイツ・ベルリンのスタートアップ「Clue」のCEO イーダ・ティン (Ida Tin) 氏が、新しいビジネスカテゴリーを表すものとして「FemTech」という言葉を作ったのがきっかけで、その後、急成長するデジタルヘルス分野として大きな注目を集めています。

女性特有の健康課題を解決するフェムテック
生理、妊娠、出産、不妊、更年期障害、セクシュアルウェルネスなど、女性の健康に関わる課題をテクノロジーで解決することを目指しているフェムテックですが、世界の人口の約50%が女性であるにもかかわらず、まだまだ新しい分野といえます。


今回CROSSBIEが発信するウェビナー座談会では、
モデレーターの山本知佳 (CROSSBIE, CEO) が、日本とヨーロッパからフェムテック業界を牽引する女性起業家4人をお招きし、ヘルステック分野における女性の起業の必要性を改めて訴えました。そしてゲストスピーカー4名のみなさまにはフェムテック業界の現在のトレンドや課題、女性を取り巻く現状について、それぞれの視点から意見を述べて頂きました。

女性の性に関わるトピックはタブーなのか?

日本は保守的なのか?

ヨーロッパは先進的なのか?

欧州と日本のFemTech(フェムテック)女性起業家たちと語る

Healthtech Women Japan 代表の竹之下千尋 (たけのした ちひろ) さんは、ヘルスケア・福祉分野では女性が80%を占めるにもかかわらず、女性のリーダーシップが欠如していることを指摘されました。この問題を解決するために、竹之下さんのチームは、ご自身も運営に参加している「Womb」のビジネスインキュベーターを通じて、ヘルスケアや女性の健康に関する組織と提携し、日本と米国でネットワーキングイベントを開催しています。また、2025年までのフェムテック産業の可能性についても語り、アメリカのヘルステックNPOの女性たちを日本市場に呼び込む際に弊害となっている日本の文化的な問題について解決策を模索しています。

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次に登壇した、ジョコネ。代表取締役の北 奈央子 (きた なおこ)さんは、まず、日本独特の女性の生理や避妊に関するトピックをベールに包む風潮を指摘しました。例えば、日本ではドラッグストアで生理用品を買う時、レジで茶色などの紙袋に別包装されるのです。それは他人が外から買い物袋を見て、生理用品が入っているとわからないようにするためです。このこのような習慣があるのは日本だけではないでしょうか。また、日本人の低用量ピル服用率の低さについても触れました。

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さらに、北さんは、妊娠中や産後や40代以上の女性の多くが悩む尿もれについて、女性自身の認識不足の危険性を指摘します。多くの女性を悩ませている尿もれは、排尿をコントロールする筋肉である骨盤底筋という筋肉の劣化から起きるため、多くの場合は筋トレで改善できるのです。北さんが立ち上げたスタートアップ「ジョコネ。」では、出産後の女性、働く母親、更年期障害の女性を対象に、その不快を和らげる支援をするプラットフォームを提供しています。骨盤底筋トレーニングや、手頃な価格でのオンラインパーソナルトレーニング、マタニティサポートなどのオプションを通じて、女性がヘルスリテラシー高く生きられる社会の実現のため、支援を提供しています。今後は、日本以外の国にもビジネスの裾野を広げていきたいと考えているそうです。

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フランスはパリから参加してくださった3人目のパネリスト、リア・ディアスさん (Quæfacta, CEO)は、彼女がヘルスケア業界で目指したい5つのC、Courage(勇気)、Commitment(責任)、Conviction(信念)、Care(ケア)、Change(変革)をテーマにご自身の取り組みをまとめてくださいました。リアさんは、AIとブロックチェーンによって医療データの自己所有を促進することで、これらの目標を目指しています。彼女のスタートアップQuaefacta社では、医療データを民主化することで、個人のプライバシーと同意を確保することを目指しています。女性のためのパーソナライズされたヘルスケアを可能にし、医療情報の第三者による所有や変換に起因する情報伝達のエラーをなくすことを目指しています。

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最後のパネリストは、ドイツ・ベルリンを拠点に活動するモニカ・レイ・スコットさん(TABOO TECH, Design & Innovation Specialist)です。先ほどリア・ディアスさんが挙げた5つのCにもうひとつのCを加えて、 Connection(つながり)を可能にするスペースを、フェムテックに携わる組織同士に提供することを目指しています。彼女は、デザインとイノベーションのエキスパートとして、ヘルステック分野の消費者とイノベーター達のために、機会とアクセスの基準を高めています。彼女のスタートアップ「Taboo Tech」を通じて、一般的にタブーとされている話題について、ビジネスの現場での議論やイノベーションを可能にするムーブメントを起こしています。彼女の目的は、イノベーターとオーディエンスのネットワークを広げ、男女のライフスタイルを向上させることです。

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おわりに

パネルディスカッションでは、女性向けのヘルステックに存在する固有の偏見と、それに対処するための方法について焦点が当てられました。日本で、また欧州で、それぞれのパネリストが取り組んでいる事業は、より透明性が高く、女性のヘルステック分野における市場へのアクセスを向上させるものです。ウェビナー後半のQ&Aセッションでは、視聴参加者からも「日本の女性はなぜピルを使用しないのか?」「日本の女性は避妊はどうしているのか?」など、日本と欧州での女性の性に関する社会意識の違いについても質問が飛び交うなどの盛り上がりを見せ、フェムテックに対する関心やニーズの高さ、また、女性一人一人が自分の身体や健康を知ることへの意識の高さを感じられるウェビナーとなりました。

CROSSBIEでは今後さらにデジタルヘルス・ウェルビーイング分野への支援に注力していきます。これからも日本と欧州をまたぐグローバルビジネスの成長に向け、ニューノーマル時代の企業・スタートアップの挑戦を支援します。

お気軽にお問い合わせください。projects@crossbie.com

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