スタートアップエコシステム比較 ドイツ vs. フランス

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ドイツとフランスからスタートアップ企業の代表をお招きし、ヨーロッパとアジアをつなぐエコシステムについてのウェビナーを行いました。

ドイツとフランスはともにヨーロッパのスタートアップエコシステムを牽引していて、特にベルリンとパリは今後も注目の2大都市です。
そこで今回は、日本-フランス間のエコシステム形成を支援しているSINEORAの代表・今井氏と、ドイツとフランスのスタートアップの代表を2社ずつお招きしたウェビナーを開催しました。

前半は弊社代表・山本と、その元同僚であり現在はSINEORAのCEOを務める今井氏とドイツとフランスのエコシステムについての対談、後半はドイツとフランスのスタートアップ各社代表によるプレゼンテーションをお伝えします。


ウェビナー開催日: 
2021年1月28日

モデレーター:
山本 知佳 (CROSSBIE, Managing Director)

提供: 
Venture Café Tokyo

登壇者: 
Kimiko Imai (SINEORA, CEO)
Laurent Couillard (InUse, CEO)
Paul Peretie (Adok, CEO)
Ikuo Hiraishi (Infarm, Managing Director)
Deniz Ficicioglu (betterfish, Co-founder)


3拠点集中のドイツと地方分散型のフランス、共通点は政府からの手厚い支援

最初の30分は、SINEORA代表のKimiko Imai氏と弊社代表・山本とのインサイダートークです。SINEORA(シンノラ)は、企業が協業したいスタートアップ企業とのマッチングを援助するシステムを提供しています。日仏間を中心としたオープンイノベーションの推進や、フランスのスタートアップ企業の日本進出の手助けなども行っており、フランスのエコシステムに精通しています。

ヨーロッパのスタートアップエコシステムに注目すると、ベルリンとパリがツートップにいることがわかります。しかし国レベルで比較すると、フランスは産業が地方に分散しているのに対し、ドイツはベルリン、バイエルン、デュッセルドルフの3拠点が強く、さらにトップ産業の半分以上はベルリンに集中しています。
産業を比較すると、ベルリンはソフトウェアに強く、フランスはハードウェアとソフトウェアをつなぐスタートアップが強みとなっており、この点で日本との関連性が高く、Fintechなどが強いイギリスとは異なる一面です。

また、資金調達の面では、ドイツは政策的にもスタートアップへの補助が厚く、2019年に62億円の調達をしており、日本の36億円と比べて倍くらいの資金が集まっています。フランスでもFrenchtech政策が積極的に行われ、スタートアップ企業の数を増やす政策や、スケール拡大の資金調達を支援する政策が執られています。

SINEORAの今井氏

SINEORAの今井氏

既にヨーロッパで実績を持つスタートアップ4社を紹介

後半30分は、ドイツとフランスからそれぞれ2社のスタートアップ代表が会社紹介を行いました。

まず登壇してくれたのはInUse代表のLaurent Couillard氏です。InUseは、産業に特化したIoT統合ソリューションをSaaSで提供しています。工場で起こる多くの問題に対して、デジタルな解決方法を提示し、急速な発展を援助することが目的です。機械からのデータを利用して生産状況を改善したり、エネルギー利用や水の使用量の削減といった環境に対するKPIを設定することも可能で、7言語に対応しているという強みを活かし、既に日本のユーティリティサイトでも実用化されています。

InUseのCouillard氏

InUseのCouillard氏

次の登壇者はAdok代表のPaul Peretie氏です。Adokが提供するのは、触覚型のプロジェクターです。画面を壁に映し出すことで、壁がスクリーンに早変わり。そこに直接、指で文字を書いたり入力したりすることができます。Adokの強みは、ハードウェアを提供しているだけでなく、プロジェクターの中にソフトウェアも内臓されていることです。そのため、ソフトウェアインストールの余分なコストや特別なPCは必要ありません。既にヨーロッパでの実績があり、アジアでは量産・拡散できるパートナーを探しています。

AdokのPeretie氏

AdokのPeretie氏

3人目の登壇者はInfarmでManaging Directorを務める平石郁生氏です。Infarmは2013年にベルリンで創業し、スーパーマーケットなどでリアルタイムに野菜を育てて販売する装置を開発・提供しています。もともとはフードロスを最小化するためのソリューションとして始まりました。
Infarmで栽培される野菜は、農薬を使わず、95%も水の使用量を削減できるため、小さいスペースで環境や健康にも優しい野菜を栽培することが可能です。現在は1000のファーム、650人のファーマーとネットワークを築き、既に10カ国で実用化されており、ドイツのスーパーマーケットやパリのメトロ、レストランなどに設置されています。

Infarmの平石氏

Infarmの平石氏

最後に登壇してくれたのはbetterfish共同代表のDeniz Ficicioglu氏です。betterfishは魚の乱獲や漁師コミュニティといった漁業に関する問題を解決するために立ち上がりました。70%以上が缶詰で提供されているマグロの消費量を抑えるべく、ヨーロッパの海藻を利用した、プラントベースのツナを開発・提供しています。タンパク質などの栄養も豊富で、値段も安くすることにもこだわりました。高級スーパーではなく、一般に利用されているスーパーに卸すことで、環境保全のための新たな選択肢が増えることが期待できますね。

betterfishのFicicioglu氏

betterfishのFicicioglu氏

おわりに

ウェビナーの最後には、ドイツとフランスで官僚的な業務が少ないのはどちらか?といった制度的な質問や、自社システムの導入を考えている注目産業は何か?といった実用的な質問まで、幅広い質問が参加者から寄せられました。日本からヨーロッパへの進出は意思決定の過程や言語、文化の違いなどさまざまな障壁があり、簡単なものではありませんが、登壇者たちは日本の企業とパートナーシップを結ぶことに前向きなようでした。今後、ヨーロッパとアジアで新たなエコシステムが形成されることを期待し、CROSSBIEはそのパートナーシップ締結を支援していきます。

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